新型コロナウイルス感染症の影響による休業により著しく賃金が下がった場合には、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、翌月から改定することができる特例があります。
通常の随時改定では、4か月目に標準報酬月額が改定となりますが、特例が適用されると翌月から改定が可能になります。
ここでは、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定について解説します。
標準報酬月額の随時改定
標準報酬月額は、原則として算定基礎届によって定時決定され1年間適用されますが、年の途中に報酬が大幅に変更されたときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行われます。
- 昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
- 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
- 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
随時改定の場合は、報酬が大幅に変更された月から起算して4か月目から標準報酬月額が変更になりますが、新型コロナウイルス感染症の影響による休業で報酬が著しく下がった場合には、翌月から改定が可能になる特例があります。
標準報酬月額の特例改定
新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、休業により報酬が著しく下がった方について、一定の条件に該当する場合は、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定が可能になります。
◆対象となる条件
次の3つの条件をすべて満たしている方が対象となります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことにより、2020年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月が生じた方。
- 著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方。
- 標準報酬月額の特例改定による改定内容に本人が書面により同意している方。
※本特例措置は、同一の被保険者が複数回申請を行うことはできません。
◆対象となる保険料
4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合に、その翌月の5月から8月分保険料が対象となります。
◆受付期間
2020年6月26日(金)から2021年2月1日(月)まで
※2021年1月末日までに届出があったものが対象となります。それまでの間は遡及して申請が可能ですが、給与事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするため、改定をしようとする場合はできるだけ速やかに提出する必要があります。
◆申請書類
特例改定の適用を受けるには、次の書類を提出する必要があります。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届(特例)
- 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う標準報酬月額の改定に係る申立書
【特例改定の記載例】
◆申請先及び申請方法
管轄の年金事務所に申請(事務センターでは受付していません)
郵送(窓口持参も可能)又は電子証明書を利用した「e-Gov」からの電子申請
※ GビズID を利用した電子申請、電子媒体による申請には対応していません。
◆お問い合わせ先
ねんきん加入者ダイヤル
0570-007-123(ナビダイヤル)
03-6837-2913(050から始まる電話の場合)
月~金曜日:午前8時30分~午後7時、第2土曜日:午前9時30分~午後4時
健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定についてまとめてみました。
この特例の適用に関しては、改定内容に本人が書面により同意していることが条件になっているため、申請にあたっては事前に従業員から同意を得る必要があります。
また、特例の届出等の内容を確認できる書類は、届出日から2年間保存することが求められているため注意が必要です。
編集後記
昨日は、法人の決算関連の業務を中心に。夕方からは税理士会の関係で同業者の方と打合せでした。