フリーランスや個人事業主の方で、クラウド会計の導入に取り組む方が増えています。
ネットの広告では、「誰でも簡単に使える」「簿記の知識ゼロでも大丈夫」と紹介されているので、簡単に導入ができるイメージがあるのでしょう。
でも、ひとりでクラウド会計の導入に取り組んで、上手く運用しているケースは少ないです。
クラウド会計の導入は大変なのも
フリーランスや個人事業主の方で、自分で経理をするためにクラウド会計の導入に取り組む方が増えています。
自分で経理に取り組む姿勢はいいことで、わたしもこういう姿勢の方は応援したくなります。
しかし、ひとりで導入に取り組んだけど、上手く使いこなせずに運用を断念しているケースが多々あります。
クラウド会計は、「簿記の知識がなくても簡単に使える」というイメージを持っている方がいますが、ネットバンキングやクレジットカードを連携しただけで、経理ができるような簡単なシステムではありません。
クラウド会計の機能を理解したり、最低限の経理の知識を身に付けるなどの準備は必要です。
上手くクラウド会計を活用したいなら、それなりの準備とステップを踏んで取り組みましょう。
クラウド会計の導入で失敗する例
クラウド会計の導入において、いくつか運用に失敗するパターンがあります。
それぞれのケースについて、失敗する原因を見ていきましょう。
自分で経理に取り組んで費用を押さえたい
クラウド会計を導入する理由で多いのが、「税理士への経理の丸投げをやめて、自分で経理ができるようになりたい」というものです。
確かに、すべての業務を税理士に丸投げしていては、税理士に支払う費用は高くなります。
自分でできるようになれば、その費用が押せさえられるという気持ちはよく理解できます。
しかし、いままで税理士に丸投げしていた方が、クラウド会計を導入しただけで、経理ができるようにはなりません。
経理の知識があって、会計ソフトを利用した経験があれば話は別ですが、初めて会計ソフトを利用する方が、そんなに簡単に操作できるものではありません。
ですから、導入はしたものの、どう処理していいかわからず、運用をやめてしまうケースが多いのです。
それから、フリーランスや個人事業主がクラウド会計を導入する時期は、1月がベストです。
このタイミングを知らずに、年の後半になってから導入をして、導入前に発生している取引の設定方法がわからず、運用ができないというのもよくあります。
事業を始めたので導入してみた
事業を始めたので、とりあえず経理をするためにクラウド会計を導入したというケースです。
最初から自分で経理に取り組むという姿勢はいいのですが、「簡単に経理ができる」という広告に乗せられて始めてみたけど、上手くいかなかったという失敗談もよく聞きます。
事業の立ち上げ時は、開業費などのイレギュラーな取引があったり、経理の流れが確立していなかったりして、クラウド会計でも手入力で対応することが増えます。
そして、実際に導入してみたけど「簡単に経理ができる」とはほど遠く、処理がわからくなって運用がとまってしまいます。
経理の経験がないのであれば、まずは税理士に相談して、経理の仕組みを整理することから始めるべきです。
税理士からクラウド会計を進められた
税理士から「業務の効率化になるから」と、クラウド会計の導入を進められることがあります。
経理の資料を紙ベースで受け渡ししている場合に、税理士から「資料をデータでほしい」とお願いされ、クラウド会計を導入するケースです。
このようなケースは、税理士の都合で導入を進めているので、事業主は受け身になります。
税理士が導入をしっかりサポートしてくれればいいのですが、運用はすべて事業主に任されているときは、間違いく運用はストップしてしまいます。
そして、クラウド会計の運用ごと税理士に丸投げするという結果になり、クラウド会計の月額費用分だけを追加で払い続けることになるのです。
したがって、税理士からクラウド会計の導入を進められた場合は、その後のサポート体制を確認してから導入を検討しましょう。
専門家に相談するのがおすすめ
クラウド会計もしっかりしたステップを踏んで導入をすれば、上手く活用できます。
それでは、どのようなステップが必要なのかを見ていきましょう。
経理の仕組みを整理する
クラウド会計の強みは、「お金の出入りを帳簿に付けることが効率化できる」ことなので、まずは「お金の出入りを洗い出す」作業から始めます。
売上や仕入れは、掛取引なのか現金取引なのかや、経費の支払いは振込みなのか現金払いなのかといった、お金の流れを把握します。
そして、事業の取引におけるお金の出入りを整理できたら、日々発生するものと月単位で発生するものにわけて、経理業務の流れをまとめます。
この一連の流れを、税理士と一緒に進めると、経理の仕組みが整理できます。
クラウド会計の導入で失敗するケースの多くは、事業主がこの経理業務の流れを整理できていないのが原因です。
経理業務をクラウドに合わせる
経理の仕組みが整理できたら、その仕組みをクラウド会計向けに手直しします。
具体的には、預金口座やクレジットカードが事業用とプライベートの兼用であれば、事業専用の預金口座やクレジットカードを準備します。
そして、現金による経費支払いが多いのであれば、口座振替やクレジットカード払いに切り替えたり、電子マネーのSuicaなどを活用して現金の利用を減らします。
それから、現金売上が多いのであればiPadレジを導入したり、掛売上があるならクラウド会計の請求書サービスを利用してデータの連動を図ります。
領収書については、スマホアプリのスキャン機能を活用して、その都度処理するようにします。
また、経理の仕組みに合わせて、どのクラウド会計ソフトを導入したらいいかを税理士に相談するといいでしょう。
導入のサポートを受ける
クラウド会計向けに経理業務が手直しできれば、運用もしやすくなります。
しかし、クラウド会計の使い始めは、設定する項目がいろいろあるため、税理士のサポートを受けることをおすすします。
導入開始から1、2か月の間、税理士のサポートを受ければ、日々処理することと月単位で処理することの操作がわかるため、あとはひとりでの運用が可能になります。
クラウド会計は、このような導入時の仕組みづくりによって、その後の運用成果が変わってくるのです。
この仕組みがしっかりしていないと、処理が煩雑になって、運用は途中でストップします。
そして、その状態で税理士に丸投げすると、税理士も手直しの作業が増えるため、通常より高い費用を請求されることになります。
もうひとつ必要なのが、最低限の経理の知識は身に付けることです。
クラウド会計は、自動連係などで帳簿づけをサポートしてくれますが、どんなことが行われているかをある程度把握できる知識は必要となります。
まったく経理のことがわかっていないと、処理の間違いに気付くことができず、あとから大量の修正作業が発生してしまいます。
長くなりましたが、ひとりでクラウド会計の導入に取り組んで失敗した話をよくお聞きするので、その原因と導入のポイントをまとめてみました。
自分で経理に取り組むためにも、必要なところは税理士に相談しながら、クラウド会計の運用を上手く進めてもらいたいものです。
編集後記
昨日は、税理士登録時研修の1日目でした。丸一日の研修はなかなか集中力が持ちません。あと二日もあるかと思うと、ちょっと気が滅入ります。