採用力

税理士業界は採用の経験値が低い。これがミスマッチが起こる原因のひとつ

税理士業界で転職活動を経験すると、他業界に比べて採用の経験値の低さを感じます。

これが採用におけるミスマッチが起きやすい原因のひとつでしょう。

 

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中途採用が中心の採用活動

11年前に採用業界からキャリアチェンジをして、税理士業界に転職しました。

独立までに何度か転職活動を経験して感じたのが、税理士業界の採用力の低さです。

採用力が低いと採用時にミスマッチが起こりやすく、離職率の高さにつながります。

 

「採用力」とは、求める人材を採用するために必要な力で、中小企業では「伝える力」と「ひきつける力」が重要な要素になります。

採用力が低いと感じた理由は、次のようなことからです。

  • ハローワークの求人だけで採用活動している事務所が多い
  • 欠員補充の求人が多い
  • HPがない事務所が多い
  • 採用にお金をかけている事務所が少ない
  • 1回の面接で合否が決まることが多い
  • 形式的な質問だけの面接が多い
  • 採用に興味がない面接官や職員が多い

 

いま税理士業界は深刻な人材不足に悩まされているため、採用に対する取り組みに変化がみられる事務所もあります。

しかし、このような事務所はごく一部で、多くの事務所はいままで通りの採用活動を続けています。

 

なぜ、税理士業界の採用力が低いかというと、中途採用の経験しかない事務所が多いからです。

税理士業界は、先を見据えた計画的な採用をする余裕がない小規模事務所が多いため、有資格者又は実務経験者を求める傾向が強くなり、どうしても中途採用による人材確保に偏ってしまいます。

 

採用に対する経験値が低い

「採用力」においては、新卒採用の方が中途採用より高いものが求められます。

就職活動をしている学生は、知名度の低い中小企業のことを知りません。

そんな学生に興味を持ってもらうには、自社の魅力が何で、それをどんな表現で伝えるべきかを考えなければなりません。

これにより、求人情報で伝えるべき魅力が言語化され、求める人材にあった情報が発信できる「伝える力」が高まります。

 

税理士業界では、「会社の魅力を発信して興味をもってもらう」という姿勢が伝わらない求人が多くみられます。

ハローワークの形式的な求人票だけで、HPもないようなところでは、正しい情報が伝わるわけがありません。

もうすでに、この段階でミスマッチが発生しているようなものです。

 

それから、新卒採用の経験がない企業は、「ひきつけ」の重要性を知らずに、採用活動=選考と考えてしまいます。

中小企業の新卒採用においては、「ひきつけ」:「見極め」=「8」:「2」の比率が目安で、いまのような採用難の環境では、「ひきつけ」:「見極め」=「9」:「1」くらいが求めらます。

自社の強み、仕事のやりがい、将来のキャリアステップなどは、就職先として選ばれるためには積極的に発信すべき情報です。

 

そして、「ひきつけ」は求人情報だけで終わりでなく、選考においても同じ意識が必要です。

中途採用でよくある失敗が、選考に応募した段階で入社意思があると判断して、一方的な面接を行うことです。

わたしも、これを何度も経験しましたが、「まだ事務所のことも、仕事内容も全然理解していないのに」と思いながら、質問攻めの面接を受けました。

ときには、いきなり条件面の話から始まる面接もあって、「順番が違うでしょ」とびっくりした経験もあります。

 

中小企業の選考は、見極める場ではなく、会社の魅力を伝え続けることで、お互いの価値観を確かめ合う場です。

会社の魅力がすべての求職者に合うものではないため、その部分がお互いにズレがないかを時間をかけて話し合います。

この大切なお互いの確認を、1時間程度1回だけの面接で終えることは無理な話です。

 

このように、中途採用しか経験していない場合は、最初からボタンの掛け違いが生じやすく、それがミスマッチを起こすことに繋がります。

そして、中途採用の経験しかないという採用に対する経験値の低さが、採用力の低さとなっています。

 

採用力の2極化は激しくなる

税理士業界でも採用の重要性を理解して、新たな取り組みを始めている事務所もあります。

いままでのような中途採用一辺倒ではなく、新卒採用を積極的に取り入れ、未経験者を育てる仕組みづくりに力を入れています。

税理士業界を就職先として目指す人材が減少している環境においては、新たな採用手法を確立しないと人材難で経営が厳しくなります。

 

もうすでに採用力の2極化が進んでいますが、これからもっと差が広がるでしょう。

今後も、人材不足の環境が続くものと予想されるため、限られたパイの取り合いの採用活動は限界がきています。

採用活動のやり方を見直すか、人材を雇って組織を維持する経営を見直すかの選択を迫られている時期なのかもしれません。

 

採用を継続するなら、コンサルタントなどの専門家の力を借りて、採用力を高めることに真剣に取り組むべきでしょう。

採用力アップに取り組む事務所が増えれば、税理士業界全体の採用力が高まり、この業界を目指す人材が増えるという良い循環も生まれるはずです。

 

編集後記

昨日、DMからの問い合わせがあり、営業に行けることになりました。急に大きな反響は見込めないので、できることをコツコツ積み上げていくしかありません。

 

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