法人を設立したときに利用できる節税対策として「役員社宅」があります。
役員社宅の家賃は法人の経費になり、役員は家賃負担が減ることになるため、それぞれにメリットがある節税です。
ここでは、法人の役員社宅を利用した節税対策について紹介します。
役員社宅を利用した節税
個人事業主が法人成りをすると、自宅を「役員社宅」にして節税対策をすることができます。
役員社宅とは、法人が契約をした住宅を役員に社宅として貸し出して、役員から家賃を支払ってもらう制度です。
この制度を利用するには、まずは役員が賃借している住宅を、個人から法人の賃貸借契約に名義を変更します。
これで、法人が家主から住宅を借りて社宅として使用することになり、家主に対する家賃の支払いは法人に切り替わります。
そして、法人が借りた住宅を役員に社宅として貸し付けることで、法人が支払う家賃と役員から受け取る家賃との差額を損金にすることができます。
一方、役員は自宅を社宅にすることで家賃負担を減らすことができ、通常家賃との差額分も給与所得として課税はされません。
このように、役員社宅をうまく活用することで、法人と役員のそれぞれにとってメリットのある節税対策となります。
役員社宅の家賃計算
役員に対して社宅を貸与するときは、役員から「賃貸料相当額」の家賃を受け取っていれば、給与として課税されないことになっています。
この賃貸料相当額は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分けて、それぞれ計算方法が定められています。
小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物であれば床面積が132㎡以下の住宅、または法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99㎡以下である住宅になります。
そして、役員社宅が「小規模な住宅」に該当するときは、役員の家賃負担を大きく減らすことができます。
小規模な住宅の賃貸料相当額は、次の1から3までの合計額により求めます。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
一般的には、この方法で計算してみると、役員の家賃負担が10~20%ほどになります。
なお、役員社宅が小規模な住宅に該当しないときは、社宅物件の家賃の50%以上が賃借料相当額となります。
ただし、役員社宅の床面積が240平方メートルを超えたり、プール等の設備があるような豪華な住宅のときは、通常支払うべき使用料が賃貸料相当額になり節税効果はなくなります。
固定資産税の課税標準額
役員社宅の賃貸料相当額を計算するのに必要となるのが、「固定資産税の課税標準額」です。
この固定資産税の課税標準額は、市区町村から社宅物件を所有する大家さんへ通知されるため、自分で調べる必要があります。
そして、自分で調べるには、市区町村の固定資産税課に出向いて手続きをすれば、課税標準額を閲覧したり写しをもらうことができます。
手続きをする際には、賃貸契約書や身分証明書が必要となるため忘れずに持参しましょう。
なお、どうしても固定資産税の課税標準額が分からないときは、賃貸料相当額として支払家賃の50%以上を受け取っておけば問題はありません。
法人の役員社宅を利用した節税対策についてまとめてみました。
固定資産税の課税標準額を確認する手間がかかりますが、これをするだけで役員の家賃負担を10~20%ほどに減らすことができます。
法人の役員社宅は、法人と役員のそれぞれにメリットがあるため、おすすめの節税対策になります。
編集後記
昨日は、法人の決算関連のまとめと資料整理などを中心に。夕方からは来週から始まるオンラインマラソンに向けて1時間ほどランニングをしました。