新型コロナの影響により、外出時にはマスク等の予防対策が必要となっています。
ところで、このような予防対策のマスク購入代は医療費控除の対象となるのでしょうか?
ここでは、国税庁より公表された医療費控除の適用範囲について紹介します。
医療費控除とセルフメディケーション税制
医療費控除とは、1年間に自分や家族のために支払った医療費が一定額を超えるときに、所得控除を受けることができる制度です。
支払った医療費から保険金などで補填された額と10万円を引いた額が控除額となり、その上限は200万円になります。
ただし、総所得が200万円以下の方は、支払った医療費から総所得の5%を引いた額となります。
そして、医療費控除の対象となる医療費は、治療又は療養に必要な医薬品の購入代金で、病気の予防や健康増進のための医薬品の購入は対象外となっています。
また、医療費控除には、特例としてセルフメディケーション税制があります。
セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進及び疾病の予防として一定の取り組みを行っている人が、自分や家族のためにスイッチOTC医薬品を一定額以上購入したときに、所得控除を受けることができる制度です。
スイッチOTC医薬品の購入金額のうち、12,000円を超える部分が控除額となり、その限度額は88,000円です。
マスクやPCR検査、オンライン診療の医療費控除の適用について
新型コロナの感染予防のため、いまでは多くの方がマスクを着用して外出をしています。
このような感染予防のためのマスク購入代や、PCR検査の費用が医療費控除の対象となるのか気になるところです。
それでは、国税庁より公表された医療費控除の適用範囲について確認をしていきましょう。
マスク購入費用の医療費控除の適用について
医療費控除の対象となる医療費は、「医師等による診察や治療のために支払った費用」「治療や療養に必要な医薬品の購入費用」などとされています。
この場合、マスクは新型コロナの感染予防を目的に着用するものであり、その購入が治療や療養に必要な医薬品には該当しないため、医療費控除の対象とはならないようです。
他の予防対策であるうがい用の消毒液やアルコールの除菌シートも、マスクと同様に医療費控除の対象になりません。
また、疾病の予防に取り組んだ場合に対象となるセルフメディケーション税制についても、マスクがスイッチOTC医薬品に該当しないため、医療費控除の対象になりません。
PCR検査費用の医療費控除の適用について
PCR検査については、医師等の判断により受けた場合と、自己判断により受けた場合で判定が異なります。
【医師等の判断によりPCR検査を受けた場合】
新型コロナにかかっている疑いのある場合において、医師等の判断により受けたPCR検査の検査費用は、診察や治療のために支払った費用に該当するため、医療費控除の対象となります。
ただし、医療費控除の対象となる金額は、自己負担部分に限ります。
【自己の判断によりPCR検査を受けた場合】
単に感染していないことを明らかにする目的で受けるPCR検査など、自己の判断により受けたPCR検査の検査費用は、医療費控除の対象となりません。
ただし、PCR検査の結果で「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は治療に先立って行われる診察と同様に考え、その場合の検査費用は医療費控除の対象となります。
これは、いままでの人間ドッグや健康診断の取り扱いと同じで、何か異常が発見されて治療が必要になった場合には、対象となるという考え方です。
オンライン診療に係る諸費用の医療費控除の適用について
オンライン診療とは、パソコンなどを用いて自宅から医師の治療を受けることができ、診療により処方された医薬品は、医療機関から希望した薬局に処方箋情報が送付され、その薬局から自宅へ配送してもらうこともできる仕組みです。
オンライン診療に係る費用の取り扱いについては、それぞれ次のとおりとなります。
- オンライン診療料
オンライン診療料のうち、医師等による診療や治療のために支払った費用は、医療費控除の対象となります。 - オンラインシステム利用料
医師等による診療や治療を受けるために支払ったオンラインシステム利用料は、オンライン診療に直接必要な費用に該当し、医療費控除の対象となります。 - 処方された医薬品の購入費用
処方された医薬品の購入費用が、治療や療養に必要な医薬品の購入費用に該当するときは、医療費控除の対象となります。 - 処方された医薬品の配送料
医薬品の配送料は、治療又は療養に必要な医薬品の購入費用に該当しないため、医療費控除の対象となりません。
新型コロナ対策のマスクやPCR検査等の医療費控除の適用範囲について紹介してみました。
この時期になると、インフルエンザの予防接種について医療費控除の適用の有無を質問されることが多くなります。
医療費控除の対象は、診療や治療を目的としたものに限り、マスクや予防接種といった予防を目的としたものは対象とはなりません。
編集後記
昨日は、法人決算の電子申告やまとめの資料作成を。あとは年末調整に向けて給与データの入力などをしていました。