2019年10月より消費税率が10%に引き上げられますが、今回の増税においては前回に比べて駆け込み消費が少なそうです。
ポイント還元制度の導入
前回の消費税増税時に、増税後の需要が大きく落ち込んだことから、今回は景気の冷え込みを防ぐ目的で「ポイント還元制度(キャッシュレス・消費者還元事業)」が導入されます。
ポイント還元制度とは、中小・小規模事業者の店舗でキャッシュレス決済を利用すると、購入額の5%(フランチャイズ加盟店は2%)に相当するポイント還元が受けられるというものです。
この制度は、2019年10月1日から2020年6月30日までの9か月間ですが、この期間内にキャッシュレス決済で商品を購入すれば、5%のポイント還元が受けられます。
したがって、消費税が10%に増税されても、ポイント還元により実質負担は5%になります。
すなわち、増税前の8%で商品を購入するより、増税後の方が負担額が少なくなります。
しかし、すべての店舗がポイント還元制度の対象になるわけでなく、事前に「ポイント還元制度」に登録した店舗のみで利用できる制度です。
2019年8月21日時点で、約43万店の事業者が登録申請をしており、制度開始の10月1日までには、まだまだ増える予定です。
そして、10月1日の制度開始前には、対象となる店舗が検索できる地図アプリが公表される予定のため、制度を利用したい消費者は、対象店舗を見つけやすくなります。
百貨店などで駆け込み
ポイント還元制度は、利用できる店舗が中小・小規模事業者が運営するものに限定されるため、制度の対象外となる百貨店で増税前の駆け込み消費が起きているようです。
特に、百貨店でしか購入できないブランド品や高級品は、増税後もセールの対象にはなりにくいため、8%のうちに購入しておきたいという消費者が増えるのでしょう。
まだ夏だというのに、冬物のダウンコートが昨年の3倍も売れている百貨店もあるそうです。
そして、百貨店では、月末に向けて更に駆け込みが増えると見込んでいて、営業時間を延長する店舗がでてきています。
それから、クレジットカード業界は、ポイント還元の対象となる利用限度額を月30万円(ポイント15,000円)までとしたため、30万円を超えるような高額品には、駆け込み需要がありそうです。
しかし、このクレジットカードの限度額もカード1枚あたりなので、何枚もクレジットカードを所有していれば、30万円×枚数分が月額の限度額となります。
増税後も、ポイント還元制度の対象店舗が取り扱う高額品であれば、複数のクレジットカードを組み合わせて利用すれば、ポイント還元を受けながら高額品が購入できそうです。
定期券や前売券はお得
今回の増税においても、前回と同様に旅客運賃等については、「経過措置」が適用されます。
したがって、経過措置の対象となる旅客運賃等を2019年9月30日までに購入すれば、利用日が2019年10月1日以降であっても消費税は8%になります。
そして、次のような旅客運賃等が経過措置の対象となります。
① 汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃
② 映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ等に係る施設への入場料金
③ 競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
④ 美術館、遊園地、動物園、博覧会等への入場料金
たとえば、2019年9月30日までに定期券を購入すれば、2019年10月1日以降の利用開始日であっても、すべて8%が適用されます。
しかし、ICカードへのチャージは単なるお金の移動なので、2019年9月30日までにチャージしても、増税後に利用したときに10%の消費税が課せられます。
定期券については、前回の増税時では月末ギリギリに駆け込み購入が増え、定期券売り場に長い列ができたため、余裕をもって購入をした方がいいでしょう。
また、テーマパークの年間パスポートや映画館等の前売券も経過措置の対象になるので、9月中の購入がおすすめです。
今回は、ポイント還元制度が駆け込み消費に大きく影響しているようです。
食料品や日用品であれば、増税後にキャッシュレス決済を利用して購入した方が、お得に買い物ができそうなので、増税前に慌てて買い込む必要はなさそうですね。
編集後記
先日、マイナンバーカードを利用した「マイナポイント」の導入検討が発表されました。政府としては来年6月に終了するポイント還元制度のあとの景気対策としてマイナポイントを導入し、伸び悩んでいるマイナンバーカードの普及に結び付けたいようです。