2019年10月からの消費税率の引き上げに合わせて、商品の価格表示を変更する必要があります。
特に、軽減税率の対象商品を取り扱う飲食店では、店内飲食とテイクアウトの価格表示は、どのような対応になっているのでしょうか?
価格表示の原則
事業者が商品の販売などを行う場合は、その価格を「税込表示」することが義務付けられています。
すなわち、消費者を混乱させないように、値札やチラシなどには消費税額を含めた価格を表示することが原則です。(※2021年3月31日までの特例として税抜表示が認められている)
たとえば、次のような表示が「税込表示」に該当します。
・10,800円
・10,800円(税込)
・10,800円(税抜価格10,000円)
・10,800円(うち消費税額等800円)
・10,800円(税抜価格10,000円、消費税額等800円)
・10,000円(税込10,800円)
※支払総額である「10,800円」を表示する必要があります。
2019年10月からの消費税率の引き上げに伴って、価格表示の変更が必要になります。
特に、軽減税率の対象商品を取り扱う飲食店では、店内飲食とテイクアウトでは消費税率が異なるため、消費者を混乱させないように、わかりやすい価格表示が求められます。
店内飲食とテイクアウト
軽減税率の対象品目を取り扱う店舗では、増税後に8%と10%の異なる税率の商品を販売することになります。
店内飲食とテイクアウトがある外食チェーンが、どのような対応を選択しているかをみてみましょう。
店内飲食とテイクアウトが税込み同一価格
・すき家
・なか卯
・松屋
・サイゼリヤ
・ケンタッキーフライドチキン
・フレッシュネスバーガー
税込価格500円で同一価格の場合
テイクアウト(8%) → 本体価格463円 消費税37円
店内飲食(10%) → 本体価格455円 消費税45円
同一価格にするには、店内飲食の価格を値引きするか、テイクアウトの価格を値上げして税込価格を統一します。
しかし、店内飲食の値引きは、実質2%の値下げとなるため、需要喚起に結びつかなければ、事業収益に与える影響は大きくなるでしょう。
そこで、同一価格を選択するなら、テイクアウトには配送料や容器包装等のコストがかかることを考慮して、テイクアウトの本体価格を値上げする方がいいでしょう。
同一価格を選択している事業者は、消費者と店舗スタッフの双方にとって、「わかりやすい会計」を優先しています。
やはり、消費者には同じ商品の価格表示が2種類あるより、ひとつの価格に統一されている方がわかりやすいはずです。
したがって、消費者を混乱させないことや、店舗スタッフのオペレーションの簡素化を考えると、税込価格を同一にした方が良さそうです。
店内飲食とテイクアウトで本体同一価格
・吉野家
・すかいらーく
・デニーズ
・モスバーガー
・スターバックスコーヒー
・ドトールコーヒー
・ミスタードーナツ
・CoCo壱番屋
本体価格500円で同一価格の場合
テイクアウト(8%) → 本体価格500円 消費税40円
店内飲食(10%) → 本体価格500円 消費税50円
本体価格が同一の場合は、同じ商品が同じ本体価格で販売されているため、消費者の納得感は得られやすくなります。
そして、テイクアウトは店内飲食に比べて2%税率が安くなるため、テイクアウトのお得感が伝わるというメリットがあります。
したがって、本体同一価格を選択している事業者は、増税後にテイクアウト需要が増えることを見据えての決定なのでしょう。
また、店舗内の飲食スペースが狭く、意図的にテイクアウトを増やしたいのであれば、本体同一価格を選択するといいでしょう。
外食産業は人手不足が深刻なため、店内飲食からテイクアウトへ売上比率をシフトして、効率的な店舗運営を目指すという戦略も考えられます。
大手ハンバーガーチェーンであるマクドナルドが価格表示をどのようにするか検討中で、いまだに方向性が発表されていません。
中小事業者の店舗では、マクドナルドの発表をみてから方向性を決めるところも多いでしょう。
今回の価格表示の変更は、店内飲食とテイクアウトの比率に影響を与えるなどの複雑な要素があるため、長期的な店舗運営の戦略を見据えて価格表示の変更を検討する必要があります。
編集後記
先週の金曜日は、税理士会の軽減税率制度に関する研修に参加しました。研修の講師が、以前大原の消費税法の講座でお世話になった方だったので、研修を聞きながら受験生時代を思い出していました。聞き慣れた話し方だったので、内容が理解しやすい研修でした。